最終更新:2026年9月|特定技能・入管手続き
登録支援機関の申請は、法令の「登録拒否事由」に当たらなければ、法人でも個人でも原則として登録されます。つまり審査は加点方式ではなく、13個の落とし穴を1つも踏まないかどうかの減点方式です。そして実際に落ちる会社の多くは、前科でも反社でもなく、「実績」と「体制」でつまずいています。
そもそも登録拒否事由とは?審査は「減点方式」
登録支援機関の登録は、入管法第19条の26第1項に列挙された事由(登録拒否事由)に該当しない限り、認められます。裏を返すと、審査官が見ているのは「この会社が優秀かどうか」ではありません。「アウトの項目に引っかかっていないか」だけです。
ここを取り違えて、事業計画の熱意や取引先の多さをアピールしても加点にはなりません。逆に、たった1項目の体制不備で不登録になります。だからこそ、申請前に13項目を1つずつ潰す作業がそのまま合格率になります。
この記事の読み方
13の事由を、原因の性質で「過去」「体制」「お金」の3つに整理しました。自社に関係のありそうな章から読んでも構いません。つまずきやすさの目安も表に入れています。
13の登録拒否事由 早見表
まず全体像です。「対象期間」は、その事情が何年さかのぼって効くかを示しています。
| No | 登録拒否事由 | 対象期間 | つまずきやすさ |
|---|---|---|---|
| 1 | 一定の刑罰歴がある | 5年 | ★ |
| 2 | 登録支援機関の登録を取り消された | 5年 | ★ |
| 3 | 出入国・労働関係法令に関する不正行為 | 5年 | ★★ |
| 4 | 暴力団排除(反社会的勢力との関係) | 現在 | ★ |
| 5 | 行為能力・役員等の適格性 | 現在 | ★★ |
| 6 | 行方不明者を発生させている | 1年 | ★★ |
| 7 | 支援責任者・支援担当者を選任していない | 現在 | ★★★ |
| 8 | 適正な受入れ・相談業務等の実績がない | 2〜5年 | ★★★★ |
| 9 | 情報提供・相談・面談の体制がない | 現在 | ★★★ |
| 10 | 支援実施状況の文書を作成・保管しない | 現在 | ★★ |
| 11 | 支援責任者等と受入れ機関の関係が不適切 | 5年 | ★★★ |
| 12 | 特定技能外国人に支援費用を負担させる | 現在 | ★★ |
| 13 | 委託契約時に費用の額・内訳を明示しない | 現在 | ★★ |
第1章|「過去」でつまずく 5つの事由
会社や役員が過去に何をしたか。ここは書類で機械的に判定される領域で、対策の余地はほとんどありません。該当するなら、期間の経過を待つのが基本方針になります。
01一定の刑罰歴がある(5年以内)
次の刑に処せられ、刑の執行が終わった日(または執行を受けることがなくなった日)から5年を経過していない場合、登録できません。
- 拘禁刑以上の刑に処せられた
- 出入国または労働関係法令の違反により、罰金刑に処せられた
- 暴力団関係法令または刑法等に違反し、罰金刑に処せられた
- 社会保険各法・労働保険各法における事業主の義務違反により、罰金刑に処せられた
見落とされやすいのが4つ目です。社会保険の未加入や労働保険の手続き漏れで罰金を受けたケースも、ここに含まれます。「刑事事件なんて関係ない」と思っていた事業者が、労務管理の過去を掘り返して初めて気づく、という展開は珍しくありません。
起算点に注意
5年のカウントは「判決日」ではなく「刑の執行が終わった日」からです。罰金であれば納付日が基準になります。判決日から数えて安心していると、実際にはまだ期間内、ということが起こります。
02登録の取消しを受けた(5年以内)
登録支援機関としての登録が取り消され、取消日から5年を経過していない場合は登録できません。
重要なのは、この効力が法人だけでなく人にも付いてくる点です。取り消された法人の役員だった方も対象に含まれます。別会社を新たに設立して申請しても、役員に名前が載っていれば同じ結論になります。
03出入国・労働関係法令に関する不正行為(5年以内)
申請日前5年以内に、出入国または労働関係法令に関して不正または著しく不当な行為があった場合は登録できません。
ここは刑罰と違い、有罪判決を要件としていません。不法就労の助長、技能実習での不適正な取扱い、虚偽書類の提出といった行為が、行政の判断として評価されます。前章の刑罰歴よりも射程が広い項目だと考えてください。
04暴力団排除(反社会的勢力との関係)
次のいずれかに該当する場合は登録できません。
- 申請者(法人を含む)またはその役員が暴力団員等である
- 暴力団員等が事業活動を支配している
実質的な支配関係も見られるため、名義上の役員構成だけを整えても意味がありません。
05申請者の行為能力・役員等の適格性
次のいずれかに該当する場合は登録できません。
- 精神機能の障害により、支援業務を適正に行うために必要な認知・判断等を適切に行えない
- 破産手続開始の決定を受け、復権していない
- 法人の役員(または未成年者の法定代理人)に、登録拒否事由に該当する者がいる(第13号・第14号など一部を除く)
役員は「全員」が審査対象です
3つ目は、実務でいちばん事故が起きるポイントです。申請の当事者は社長でも、審査されるのは役員全員。出資だけしてもらっている名前だけの取締役、親会社から送り込まれた非常勤役員も含まれます。申請前に役員名簿を確認し、全員から状況を聞き取っておくことをおすすめします。
第2章|「体制」でつまずく 6つの事由
ここが本題です。登録支援機関の申請でつまずく理由の大半は、この章に集中しています。逆にいえば、準備次第で結果を変えられる領域でもあります。
06行方不明者を発生させている(過去1年)
登録支援機関の責めに帰すべき事由により外国人の行方不明者を発生させている場合、支援体制が十分とはいえないため登録できません。原則として、過去1年間に行方不明者を発生させていないことが求められます。
「責めに帰すべき事由」がポイントです。単に失踪者が出た事実だけでなく、支援の不備が原因だったかどうかが見られます。とはいえ、疑われる状況を作らないに越したことはありません。日々の面談記録が、後になって自社を守る証拠になります。
07支援責任者・支援担当者を選任していない
登録支援機関には、次の体制が必要です。
- 支援責任者:役員または職員から選任する
- 支援担当者:支援業務を行う事務所ごとに1名以上
支援責任者が支援担当者を兼ねることは可能です。ただしその場合、支援担当者として支援業務を行う事務所に所属している必要があります。本社にいる役員が、遠方の支店の支援担当者を兼ねる、という設計はできません。
08中長期在留者の適正な受入れ・相談業務等の実績がない
実務上、最大の関門がここです。次のいずれかを満たさない場合、登録できません。
- 過去2年間に、中長期在留者の受入れまたは管理を適正に行った実績がある
- 過去2年間に、報酬を得る目的で業として、本邦在留外国人に関する相談業務に従事した経験がある
- 支援責任者・支援担当者が、過去5年間に2年以上、中長期在留者の生活相談業務に従事した経験を有する
- 上記1〜3と同程度に適正な支援ができる者として、出入国在留管理庁長官が認める
なお「中長期在留者」の範囲は、法令上の定義(一定の就労系在留資格など)に基づきます。留学生のアルバイトを雇っていた、というだけでは実績として評価されないことがあるため、どの在留資格の人を、どの立場で受け入れていたのかを整理してください。
実績がない場合の現実的な進め方
自社に受入れ実績がないなら、3の経路、つまり要件を満たす人を支援責任者・支援担当者として迎える設計がもっとも現実的です。「過去5年間に2年以上」という条件は、今日から経験を積み始めても間に合いません。人の採用や体制づくりから逆算すると、申請までに数か月単位の準備期間を見ておくのが安全です。
09情報提供・相談・面談の体制がない
次の体制を整えていない場合は登録できません。
- 特定技能外国人が十分に理解できる言語での情報提供体制
- 担当職員を確保したうえでの、同じ言語による相談対応体制
- 支援責任者または支援担当者による、特定技能外国人および監督者等との定期面談体制
「十分に理解できる言語」は、日本語能力試験の合格証があるから日本語でよい、という話ではありません。生活や労働のトラブルを不安なく相談できる水準が前提です。受け入れる予定の国籍から逆算して、通訳の確保や委託先を先に決めておきましょう。
10支援実施状況の文書を作成・保管しない
登録支援機関には、1号特定技能外国人支援計画の実施状況に関する文書を作成し、雇用契約の終了日から1年以上保管することが求められます。これを行わない場合は登録できません。
登録後の運用ルールに見えますが、申請の段階から「そうした運用を行う体制があるか」が問われます。面談記録や相談対応記録のフォーマットを先に作り、誰がいつ記録するかまで決めておくと、審査でも運用でも困りません。
11支援責任者・支援担当者と受入れ機関との関係が不適切
支援の適正性・中立性を確保するため、次に該当する場合は登録できません。
- 支援責任者または支援担当者が、法定の登録拒否事由(法第19条の26第1項第1号〜第11号)のいずれかに該当している
- 特定技能所属機関の役員の配偶者、2親等内の親族、または役員と社会生活上密接な関係を有する者が、支援責任者として選任されている
- 過去5年間に特定技能所属機関の役員または職員であった者を、支援責任者として選任している
グループ会社内での「自社支援」設計に注意
実際によくあるのが、受入れ企業がグループ会社を登録支援機関にして、元の会社の元社員を支援責任者に置くケースです。3つ目に正面から当たります。支援は受入れ企業から独立した立場で行うもの、という制度趣旨からの制限なので、人選の段階で切り分けが必要です。
第3章|「お金」でつまずく 2つの事由
費用の設計は、契約書を作ってから直すと手戻りが大きい部分です。ビジネスモデルを考える最初の段階で織り込んでください。
12特定技能外国人に支援費用を負担させる
義務的支援に要する費用は、特定技能外国人に対して直接・間接を問わず負担させてはいけません。負担させている場合、登録できません。
気をつけたいのは「間接的に」の部分です。給与から天引きする、家賃や手数料に上乗せして回収する、といった形も含まれます。支援費用は受入れ企業と登録支援機関の間で取り決めるもの、と整理しておけば間違いません。
13委託契約時に費用の額・内訳を明示しない
特定技能所属機関から支援計画の全部の実施を受託する際は、支援業務に要する費用の額および内訳を明示する必要があります。明示しない場合は登録できません。
「月額3万円一式」では内訳の明示になりません。事前ガイダンス、生活オリエンテーション、定期面談、住居確保の支援といった項目ごとに、何にいくらかかるのかを示せる形にしておきましょう。契約書のひな形を見直す価値がある項目です。
申請前セルフチェックリスト
13項目を、自社の状況に置き換えて確認できる形にしました。クリアできているものにチェックを入れてください。
登録拒否事由 13項目チェック
すべてクリアで、登録の土俵に立てます
2027年4月、要件はさらに厳しくなる見込みです
2024年6月に公布された改正入管法および育成就労法により、技能実習制度は育成就労制度へ移行します。施行日は2027年4月1日です。これに伴い、登録支援機関に求められる要件も見直される見込みで、支援責任者の常勤化や講習修了の義務化、支援担当者が担当できる人数の上限設定、支援実績・費用の公表義務などが議論・整理されています。
制度の詳細は今後の告示等で確定していく部分があるため、最新情報は出入国在留管理庁の公表資料で確認してください。ただ、方向性ははっきりしています。名前だけの支援責任者を置いて登録を維持する、というやり方は通用しなくなります。
いま動く価値がある理由
とくに「過去5年間に2年以上」といった経験要件は、施行が近づいてから採用に動いても間に合いません。これから登録を目指す方も、すでに登録済みの方も、支援責任者・支援担当者の要件充足状況を今の時点で棚卸ししておくことが、もっとも確実な備えになります。
よくある質問
個人事業主でも登録支援機関になれますか?
なれます。登録拒否事由に該当しなければ、法人・個人を問わず登録が認められます。ただし実績要件(過去2年間の受入れ実績、または相談業務の経験など)は法人と同じ基準で判断されます。
過去に罰金刑を受けたことがあります。もう登録できませんか?
永久に不可というわけではありません。対象となる罰金刑の場合、刑の執行が終わった日から5年を経過すれば、この事由には当たらなくなります。起算点は判決日ではなく執行終了日(罰金なら納付日)ですので、まずは正確な日付を確認してください。
受入れ実績がまったくない会社でも申請できますか?
自社に実績がなくても、支援責任者・支援担当者が「過去5年間に2年以上、中長期在留者の生活相談業務に従事した経験」を持っていれば、実績要件を満たせる可能性があります。この経路をとる場合、その方の職歴を証明できる資料の準備が必要です。
支援責任者と支援担当者は、同じ人が兼任できますか?
兼任できます。ただし、その方は支援担当者として支援業務を行う事務所に所属している必要があります。複数の事務所がある場合、事務所ごとに支援担当者を1名以上置く点にも注意してください。
受入れ企業のグループ会社を登録支援機関にできますか?
グループ会社であること自体は妨げになりませんが、支援責任者の人選に制限があります。特定技能所属機関の役員の配偶者・2親等内の親族・社会生活上密接な関係を持つ方、および過去5年間にその機関の役員や職員であった方は、支援責任者に選任できません。
支援の費用を外国人本人からもらうことは一切できませんか?
義務的支援に要する費用については、直接・間接を問わず本人に負担させることができません。給与からの天引きや、手数料・家賃への上乗せといった間接的な回収も対象になります。費用は受入れ企業との間で取り決めてください。
まとめ|落ちる理由は、たいてい準備できる部分にある
13項目を通して見ると、性質がはっきり分かれます。第1章の「過去」は、期間の経過を待つしかない領域です。一方で、第2章の「体制」と第3章の「お金」は、申請前に設計し直せる領域です。そして実際に不登録となる理由は、後者に偏っています。
まずはセルフチェックで自社の現在地を確認し、埋まっていない項目から手を付けてください。とくに実績要件と支援責任者の人選は、着手から充足まで時間がかかります。ここを後回しにしないことが、いちばんの近道です。
本記事は2026年9月時点の法令・公表資料に基づく一般的な情報提供であり、個別の案件についての法的助言ではありません。制度は改正される場合があるため、実際の申請にあたっては出入国在留管理庁の最新の公表資料をご確認いただくか、専門家にご相談ください。
参考:出入国在留管理庁「在留資格『特定技能』について」/入管法第19条の26第1項/出入国管理及び難民認定法施行規則

